皮膚の神経
                                    皮膚は「触覚」というとても大切な感覚をつかさどっている臓器です。 
                                    実はあまり知られていませんが、ヒトは他の感覚がなくても生きていけるのですが、触覚は不可欠なのです。 
                                    生後、皮膚から脳に伝わる神経がきちんとつながっていない赤ちゃんは正常に育たず亡くなってしまうこともあるのです。 
                                    よく言われることですが、赤ちゃんはお母さんからの十分なスキンシップがないとその影響を一生引きずることがあります。
                                    これは医師国家試験でも出てくるくらい大切なことで、人工ミルクよりも授乳がよいという大きな理由の一つでもあります。 
                                    ちなみに、スキンシップが十分取れていない赤ちゃんは、母親や家族の環境もあるとはいえ、暴力をふるったり人格がゆがむという報告がなされています。
                                
                                    雑学っぽくなってきましたが、皮膚科医としてあえて記述します。 
                                    「ヒトは皮膚を通じて圧力・温度・痛みの3つを知覚する」 
                                    とても大切なことなのですが、意外と知られていません。 
                                    この話をすると、 
                                    「先生、水にぬれたり、サウナに入ったら湿気を感じます」 
                                    と反論される方がいらっしゃいます。
                                
                                    もっともな感想だと思います。 
                                    しかし興味のある方は是非実験してみて下さい。
                                
- お友達に目を閉じてもらい、横になってもらいます。 冷たく冷やした、乾燥した先の丸い金属棒を額において、横にすすっと動かしてみてください。 お友達は、水滴が額に落ちて、横にたれていったと感じたでしょう。
- 自分でも実験できます。 ビニール手袋をはめて目をつぶってコップの中の冷たい水に指を入れてみて下さい。 実際に皮膚は濡れていないのに濡れたと感じるはずです。
                                    「圧力・温度・痛み」 
                                    すべてはこの強弱の組み合わせでできているのです。 
                                    圧力を感じる感覚器官が軽い刺激を感じるとくすぐったく感じます。 
                                    痛みを感じる感覚器官が弱い刺激を感じると「痒み」を感じます。 
                                    ちなみに、掻くと痒みがおさまるのは、皮膚に刺激を与えることによって痒みを知覚していた脳の注意をそらすからなのです。
                                
                                    原因不明のアトピー性皮膚炎、皮膚のターンオーバーが約10倍になる尋常性乾癬、痒疹、悪性リンパ腫・・・。 
                                    痒みがとまらない皮膚病は多々ありますが、掻くと皮膚を痛めてしまい、また痒くなって掻きこわす・・・。 
                                    悪循環を止めるためにも、早期に皮膚科専門医を受診することが大切なのです。
                                
